Q. 成年後見制度とは、どのような制度ですか?
成年後見制度は一度申立てをすると、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができません。こんなはずではなかった、審判を止めたい、と後から思っても、家庭裁判所の許可が下りず、そのまま後見が開始されることもあります。あらかじめ制度の概要を知っておくことは、とても大切です。
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって、物事を判断する能力が十分ではない方について、その方の権利を守る援助者を選ぶことで、法律的に支援する制度です。
認知症などによって判断能力が十分ではなくなると、不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護サービスや施設への入所に関する契約を一人で結ぶことが難しくなるケースがあります。また、悪徳商法など、ご自身に不利益となる契約を結んでしまうおそれもあります。
このような方々を保護し、支援するための制度が、成年後見制度です。
成年後見制度には、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つの種類があります。
そして、法定後見制度は、判断能力の程度によって、後見、保佐、補助の3つの類型に分けられています。
法定後見制度は、判断能力が不十分となり、保護が必要となっている方が利用できる制度で、任意後見制度は判断能力に問題のない方が選択できる制度です。
法定後見制度 (後見、保佐、補助) |
任意後見制度 | |
対象者 | 既に保護が必要な方 | 判断能力に問題のない方 |
以下の表は、2017年の1月から12月までの間に、成年後見制度を利用した方の申立ての動機をまとめたものです。主な動機としては、預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで身上監護となっています。
身上監護とは、生活・療養看護に関する法律行為を行うことです。具体的には、施設等への入退所契約や医療契約の締結などがこれに該当します。
申立ての動機 | 件数 | |
1 | 預貯金等の管理・解約 | 29,477件 |
2 | 身上監護 | 13,312件 |
3 | 介護保険契約 | 7,007件 |
4 | 不動産の処分 | 6,532件 |
5 | 相続手続 | 6,142件 |
例えば、預金の解約や、介護サービスを受ける契約、不動産の売買や遺産分割協議などを行うときに、判断能力が不十分であると、一人では出来なかったり、不利益な結果を招くおそれがあります。
そのため、法的に支援をする人(=成年後見人等)を選任する必要があります。この法定後見制度を利用するには、保護が必要となっているご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、後見(保佐、補助)開始の審判を求める申立てを行います。
成年後見制度の申立てができる人は、ご本人(保護が必要な方)、その配偶者、四親等内の親族、市区町村長です。
また、ご本人が既に他の後見類型に属する場合には、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人も後見開始の申立てをすることができます。
以下の表は、2017年の1月から12月までの間に、実際に成年後見等を申立てた人をまとめたものです。申立人については、本人の子が最も多く、次いで市区町村長、本人の順となっています。
申立人 | 件数 | |
1 | 子 | 9,641件 |
2 | 市区町村長*1 | 7,037件 |
3 | ご本人 | 5,048件 |
4 | その他親族*2 | 4,459件 |
5 | 兄弟姉妹 | 4,357件 |
*1「市区町村長」は、ご本人に身寄りがないなどの理由で他に申立てをする人がいない場合に、必要に応じて申立てを行います。
*2「その他親族」とは、ここでは配偶者、親、子及び兄弟姉妹を除く、四親等内の親族のことをいいます。
・子、子の配偶者、孫、孫の配偶者、ひ孫、ひ孫の配偶者、ひ孫の子
・親、祖父母、祖父母の兄弟姉妹、曾祖父母、曾祖父母の親
・兄弟姉妹、兄弟姉妹の配偶者、甥姪、甥姪の配偶者、甥姪の子
・おじおば、おじおばの配偶者、いとこ
・その他、配偶者の親や配偶者の兄弟姉妹など、三親等内の配偶者の血族
成年後見人(保佐人、補助人)は、保護が必要な方のためにどのような支援が必要であるか、申立てごとに様々な事情を総合的に判断して、家庭裁判所によって選任されます。
そのため、例えば親族が後見人になりたいと思い、申立てを行ったとしても、裁判所の判断で第三者(司法書士や弁護士、社会福祉士などの法律・福祉の専門家)が後見人に選任される場合があります。
また、親族が後見人に選任されると同時に、第三者が後見監督人として重ねて選任されることもあります。
第三者が選任された場合は、ご本人の財産から第三者に対して、報酬が支払われることになります。この報酬の額は、裁判所によって公正な立場から決定されます。
第三者が選任されるか否か、第三者が誰になるのかについては、全て家庭裁判所が決定します。申立人の希望に沿わない人が選任された場合であっても、そのことを理由に不服申立てをすることは出来ません。また、希望した人が選任されそうにないという理由で、途中から申立てを取下げようとしても、ご本人の保護の必要性や公益性の見地から、取下げの許可が下りない可能性があります。
*申立ての取下げには、家庭裁判所の許可が必要です。
なお、現在では、親族以外の第三者が成年後見人等に選ばれるケースは7割以上にのぼっています。
成年後見人等に選任された人 | 2017年1月~12月 | |
1 | 司法書士 | 9,982件 |
2 | 弁護士 | 7,967件 |
3 | 本人の子 | 5,051件 |
4 | 社会福祉士 | 4,412件 |
5 | その他親族* | 1,536件 |
*「その他親族」とは、ここでは配偶者、親、子及び兄弟姉妹を除く、四親等内の親族のことをいいます。